BUPS1によるメカノトランスダクションと花粉管伸長

BUPS1によるメカノトランスダクションと花粉管伸長

※疑問・まとめなど,あくまで個人からの見解です

概要

題名

Membrane receptor-mediated mechano-transduction maintains cell integrity during pollen tube growth within the pistil.

膜受容体仲介メカノトランスダクションは花粉管の伸長において細胞の完全性を維持する

著者

Zhou X, Lu J, Zhang Y, Guo J, Lin W, Van Norman JM, Qin Y, Zhu X, Yang Z.

2021.4

雑誌名

Dev Cell. 2021 Apr 5;56(7):1030-1042.e6. doi: 10.1016/j.devcel.2021.02.030. Epub 2021 Mar 22. PMID: 33756107.

ワード

侵入的な成長 先端成長 BUPS1 メカノトランスダクション 膜受容体 花粉管伸長 ROP 細胞壁

 

研究の出発点

機械的な力の変化に対し,花粉管の先端は,どのように感知・応答しているのか調べる。

代表的な方法

① in vivo: 柱頭→花柱→トランスミッティングトラクト シロイヌナズナの器官を用いる

② semi in vivo: 花柱の中間部分で切断し,外部の培養液にさらされる状態にする

③ in vitro (TipChips): マイクロ流体デバイスの使用

 

①~③の条件において,GUS染色やGFP融合タンパクの発現から形態的な観察を行う

知見

BUPS1が花粉管先端で,機械的シグナルの応答・感知に関与していることがわかった。

狭い場所から開けた場所に伸長するとき,圧縮力が急減し,出口では引張力が生じる。そのとき,先端の細胞壁成分を変化させることに関与することがわかった。

貢献

CrRLK1Lsに近縁なBUPS1のメカノセンサーとしての役割が明らかになった。他のCrRLK1Lファミリーメンバーも機械的な刺激への応答に使われているという先行研究があり,CrRLK1Lsこそが植物における,共通したメカノセンサーなのではないかという仮説の証拠の一つとなる。

未解明

・BUPS1自体が機械的刺激を受け取っているのか,それとも仲介するだけなのか

・BUPS1の反応によって状態や分泌が制御されるらしい,ペクチンやRALFが,どのようにメカニカルフォースに対して機能するのか

 

背景知識:

・侵入的な伸長の普遍性

                 花粉管,真菌の菌糸,腫瘍の湿潤突起など

   → 侵入力の形成を可能にする特別な組織

・密集組織に侵入,あるいは密集組織から出るとき,周囲から受ける機械的なストレスは変化する

  → その応答・感知が,問題のない細胞を維持するのに重要

 

f:id:Marpo:20220102145719p:plain
(論文内の図を改変)

                

花粉管では……

①花柱→②トランスミッティングトラクトに移行する際,圧縮力が急減し,出口では引張力が生じる。

 

 

疑問点

BUPS1は機械的刺激の変化に伴って,他のタンパクが変化し,それに応答しているだけなのではないだろうか

BUPS1が機械的刺激を感知しているということはどうやったら言えるだろうか

振り返り

PI染色による,細胞壁成分の変化を調べる方法が有用

ペクチンエステル基が合成時点ではメチル化されており,それが脱メチル化されることでペクチン同士が相互作用できるようになってゲル化するというのは覚えておきたい。

再読度

2

引用確率

1

関連引用文献チェックの必要性

3.5

仮根と花粉管の制御機構がどれだけ共通しているかが気になる。引用する機会はないかもしれないが,先端成長の制御を勉強するという意味では,関連論文をチェックして,もうちょっと全体像をつかめるようにした方がいいかもしれない。

 

 

英単語

例文

意味

基本

intact

progeny

 

 

circumvent

 

degeneration

remains intact

We were able to recover the one homozygote individual from the progeny of one T1 heterozygote line.

To circumvent the difficulties of functional analysis associated with…

TT cells degeneration

そのままでいる

子孫

 

 

回避する

 

変性・退廃

基礎生物学

 

amiR

sterility

hypo-osmotic shock

SIV

 

artificial microRNA

不稔・不妊

浸透圧ショック

semi in vivo

専門

stigma

style

silique

PM

plasmolyzed

 

 

 

 

柱頭

花柱

長角果

plasma membrane原形質膜

原形質分離した

論文に使えそう

postulate

prone

we postulated that

pollen tube were more prone to rupture

仮定する

傾向にある

 

感想

 全体的にあまりぴんと来なかった。

 あと,リガンドについての話が出てくるのだが,唐突な感じがしてついていけなかった。そのリガンドが,環境の変化や花粉管が最終的には破裂する部分に機能しているのかもしれない。

 先行研究の流れの中で見ないと,この研究が果たす役割がわからないんだと思う。